日本とタイ、ASEANの“食”を中心とした相互交流をカタチに。

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ヤムヤムコラム〜 「エスニック」を消費する

「エスニック」という言葉を聞いたとき、思い浮かべるのはどんなイメージだろう。

大抵の場合はどこか知らない異国の、風変わりな衣服を身にまとっている人の姿や、
「こんなの絶対日本にはない!」と思うような、でもおいしい、スパイスやハーブが効いた
異国情緒あふれる料理を想像するだろう。

私が以前よりボランティア参加をしているNPO法人YUM! YAM! SOUL SOUP KITCHEN
(ヤムヤムソウルスープキッチン、以下ヤムヤム)も、
いわゆる「エスニック」なものに数えられる、タイ料理をキーワードに独自のコンセプトで
精力的に活動を進めてきた。
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コンテスト出展全レシピの写真

 さる2015年4月19日、タイ料理の代表格であるグリーンカレーを使った郷土料理レシピコンテスト
が開催された。
今回のイベントを通して、ヤムヤムが志向する地方活性化支援のあり方がより輪郭を帯びて見えて
きたように思う。北は北海道から南は九州まで、全応募35レシピ中、みごとに一次審査を勝ち
抜いた全9レシピのご当地グリーンカレーが振る舞われ、さながら郷土料理博覧会のようである。
例えば北海道の石狩鍋や山梨県のほうとうといった有名なご当地料理が、一堂に会していた。
しかし、そのどれもがグリーンカレーと地方の伝統的な郷土料理とを組み合わせている。
外部の「エスニック」な要素を取り入れることで、元々ある料理、食材の魅力を再発見する
その現場に居合わせたことは、感慨深いものがあった。

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山梨名物「ほうとう」の麺にからめるグリーンカレー

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コンテスト審査投票の風景

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イベントスタッフの集合写真

イベント終了後、人気投票で上位を飾った、プロの料理家でもある出展レシピの考案者が
私に語ってくれた。
「郷土料理っていうのはね、外国の人には説明しづらいものなんだよ。でも、(グリーン
カレーみたいに)あなたの国の食材でも作れるよってところを説明すると、相手もよく
分かってくれるし、興味も持ってくれるんだ」
彼の言葉には、今後の地方活性化事業を考えるうえのヒントが含まれているように
思えてならない。つまり、「おらが国」の文化遺産や歴史、主要産業を深化させていく
かたちで、「ここだけでしか見られない/味わえない」という観光・地域活性化事業上の
独自色を打ち出すでもなく(~~の名所、~~生産量日本一!などの謳い文句がそれである)、
単純に海外誘致を意識した、国際交流の活発化にシフトしていくわけでもない。
こうしたやり方は差異化が難しいほどにあらゆる自治体で行われ、飽和状態に陥っている
とも思える。それは異国のいわば「異質」なエスニック的要素を、郷土文化に取り込んで
ゆくことで、国内自治体に対しては明確な差異化と価値の再評価を、海外市場に対しては
分かりやすいコンテンツと共感を得る、新たな試みである。
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ヤムヤムソウルスープキッチン代表理事の西田誠治氏
ヤムヤムはこれまでの活動の中で、「地方の再発見」を幾度となく強調してきた。
理念にあるのは、しばしば都会に住む人にはなじみがない地方の食文化に、これまた多くの人々が
知らないタイの「エスニック」な食文化をとりこむことで、日本中にある似通った地方活性化の
潮流には埋もれない、強い独自色を出すことであった。
都会に住む人々は、「旧きよきニッポン」の郷愁漂う地方の郷土料理に、
異国の「エスニック」なものをみるまなざしを重ね合わせているのだろうか。
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ヤムヤムの団体シンボルマーク
昨今、世界無形文化遺産に登録された「日本食」という代表的な日本文化と、片や広く人口に膾炙
しているエスニック料理としてのタイの食文化。
二つの異なるベクトルをつなぐヤムヤムは、他とは一線を画す。
この独自の活動に参加しながらその動向に注目していきたいと思う。

運営事務局・ボランティアスタッフ 斎藤俊介


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