日本とタイ、ASEANの“食”を中心とした相互交流をカタチに。

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■note転載■ 品川駅で考える、日本のタイ料理について〜新タイ料理への流れを知る

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 いま、品川駅の新幹線改札前のカフェでこれを書いています。
 

とりあえず腹に何か入れねばと、改札前のカフェに座り、菓子パンをソイラテでゆっくり流し込む。あー、これで少しは目が覚めるかな。

しかし、一体いつぶりなんだろう?産地取材に出るのは。

おそらく、前回がヤムヤム奄美群島の産地取材で奄美大島(取材後半は徳之島にも寄る予定が、台風で欠航になり奄美大島に余計に泊まることになった。あれはあれで屋仁川で飲み歩いたりできて計らずも楽しかった!)へ飛んだのが2019年7月だから、ほぼ2年振りという。。
気づいたら思った以上に時間が空いてしまった。

まあ、2020年は長野へはこれまたタイ産地取材で北部から南部までの14県を一緒に回ったライターの千葉さんと辰野エリアの食の視察に出たり(タイ関連の素晴らしい繋がりを頂けた)、埼玉で大規模農地を駆使していちごの観光農園や特別栽培米を作っている農家さんに(チェンライの繋がりがあり)新規プロジェクトの打合せに行ったりはしていたんだけれど、それにしてもしばらくぶりな感じが強い。

すっかり、遠い日の出来事のよう。時間はあっという間に過ぎていく。

コロナ禍でここ1年半〜いや、ほぼ2年か、ヤムヤムの活動にとっては非常に厳しい時期だった。活動の中軸になっている47都道府県にフォーカスした産地紹介の活動はアウトプットをフードイベントにしている企画の組み立て上、全く何も出来なくなってしまったし、地方へ取材に出向くことや、大人数を集めて食べること飲むこと、人前で発表すること、人と対面でつながること、企画の持つ強みそのものが全て封じられてしまっていた。

いままでにイベント開催でお世話になっていた仲間のタイ料理シェフや店も、苦肉の策の弁当販売では当然張り合いも無く(料理人は自分の料理を食べてもらって、反応や評価をダイレクトにもらうことがモチベーションに繋がる)、正直なところ、ねぎらいの言葉を掛けに、少しでもフォローになればと店に足を運んだとて、会話も雰囲気もなんだか重々しく、あー、このまま気持ちが折れ続ける状況が続いたらもう店を辞めてしまうのかもしれないなと、こちらもネットリとしたやるせない思いを感じていた。

 

先の見えない状況に周りのすべてがジワジワと飲み込まれていってしまう状況は、こうしている今も確実に進んでいて、自分もその真っ只中に立ち尽くしているんだと。

 

不気味な不安がまるで薄い霧のように視界を霞め、心に今まで持ち続けてきた活動への熱意を取り囲んで覆い隠そうとしていたのかもしれない。

 

●コロナ禍の中でもできることはないのか?

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タイ77県の産地取材もまだまだこれからです

 

最初はオンラインイベント形式で、産地から中継を繋いだり、料理や食材を前もって参加者へ届けておいて、画面上で繋がりを演出するやりかたも実は検討してみたりした。ジンバルも買ってみたし、配信方法について仲間に相談したりしてた。

でも、何だかしっくり来ない_。
似たようなイベントに参加してみても、あまり思ったようなグルーヴ感が感じられないし、色んな事例をニュース等で見ても実際はどうなのかね?と懐疑的で自分自身の気持ちが前のめりになれない。

今はオンラインが普通になってしまったけど、未だに対面でやるほうが絶対にいいと思うし、用は足せても一体感が薄いというか、時代の流れに逆行してるのかもしれないけれど、我々は生のリアルな繋がりを産地とダイレクトに作ることでネットでは作れなかった化学反応を新たに生むことを活動の源泉にしていたから、コロナ禍のどん底からは内からも外からも納得のいく理想のイベントは作れないと思った。

また、年間7〜8回は取材に渡っていたタイも2020年2月を最後に渡航出来ていないし、進めていたタイ案件も全て止まってしまった。さて、どうすれば良いか。

 

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コロナ禍で世界が右往左往

 

ならば、いまは国内の活動に集中しよう。
フードイベント以外の展開を模索してみよう。
今はシンプルにそこをやるべき、素直にそう思えた。

日タイ両国のローカル産地を紹介し、食でつなぐことがテーマな訳だから、国内でやること、今までやれなかったことがたくさんある。

その考えの流れの中で一つたどり着いたのが、タイ料理の掘り下げ。

活動のテーマにしている食のフィルター=「タイ料理」なので、昨今の状況変化が著しい現在のタイ料理の立ち位置を今一度見極めてみたいと思った。

 

●新タイ料理  “タイ2.0”への流れ

 

私がタイ料理店で修行していた時期が今から25年前あたり、第二次タイ料理ブームの渦中だったと記憶している。

 

それから、様々なムーブメントが十年周期くらいで定期的に起こり、近年ではパクチーやガパオブームと、ムーブメントの対象自体が徐々に細かくフォーカスされ、タイ料理がマニア向けの料理からより一般向けに認知が進み、家庭の食卓へ入り込んでいると感じる。

 

このあたりの変遷を当会で以前にまとめた資料があるので参照してみてほしい。

 

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日本におけるタイ料理の歴史 *Yum! Yam! SOUL SOUP KITCHENまとめ

 

いろいろと思い起こすこともあって、懐かしいなーと思いながらも、こうやって改めて俯瞰してみると、意外とCNN GOのマッサマンカレーから10年も経ってたり、パクチーブームとか割と最近なのねとか。

 

とにかく今はガパオブームが継続中。もうブームを通り越して、すでに一般家庭への浸透フェーズに向かっていると思います。

 

●では、現在のタイ料理業界はどうなのか?

 

仮に、かつて日本へはじめて紹介された時代の宮廷料理や屋台料理をはじめとするタイ料理メニューやそれらを提供するレストランを1.0とするならば、今は2.0が新たな層として認知され始めレイヤーが重なってきたと思う。

レストラン格付けの「アジアベストレストラントップ50」にもバンコクのレストランが上位にランクインし(2021年版にはトップ50に6軒、うちトップ10には3軒入っている)、欧米等の料理とフュージョンしたタイガストロノミーが富裕層やグルマンの注目を集め、世界を知るタイ人若手料理人が力強くタイ料理の新たな世界観を作り始めている。

 

また、当然の流れとして、そのムーブメントをフォローするかたちで、日本のタイ料理でも同じ流れが起きつつあるのが今だと思う。

 

もちろん、伝統的な宮廷スタイルのタイ料理の良さはもちろんあるし、それがないとタイ料理は始まらなかった。したがって、それを否定するわけではないのでくれぐれも誤解のないように改めて伝えておきたい。

 

今も変わらぬタイ料理の魅力を伝え、異国の日本で料理の腕を振るうタイ人料理人たちに支えられて、日本国内でのタイ料理の認知は地道に広がってきた。

 

それはこれからも続いていくし、タイ好きな人たちにとってはタイ人がつくるオーソドックスなタイ料理と、王道でクラシカルなタイらしい店舗空間で味わうトムヤムクンやパッタイ、チャーンビールは、タイランドラバーにとって無くてはならない心の拠り所であり続けると思う。私が働いたタイ料理店も当然このジャンルの店だったし、周囲のタイ料理屋もみんな同じだった。あとは歌舞伎町とかのタイ人向けカラオケスナックとかくらいか。

(当時働いていた原宿のカフィアライムは今も昔も客が途絶えない人気店。近所で移転してお店も以前より広くなったのでぜひ行ってみて欲しい!おすすめですよ〜^^)

 

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タイ取材中に取材先でご馳走になった家庭で食べられているタイ料理

 

新たな流れを作る2.0の方は、タイ料理の基本レシピを踏襲しながらも、日本独自の四季の概念、食材や調味料を、シェフ独自のセンスで取り込み、日本とタイが絶妙に融合する一品に仕上げているし、提供スタイルもベンジャロン焼きやセラドンの皿、タイのお酒に縛られることなく、西洋料理寄りのプレゼンテーションや、国産ワイン、ナチュールワイン、日本酒を合わせたりと、タイ料理だからタイのものを使うという発想がそもそも無い。タイビールさえ置いていない場合もある。

 

例えば、Chompoo(チョンプー)の例。

 

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タイ料理のカオヤム(ライスサラダ)をアレンジした「鮎のカオヤム」
10種類の野菜やハーブを使いすべてを混ぜ合わせてから食べる
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ソムリエが料理に合わせてナチュールワインをレコメンドしてくれる
まずはビールでもいいけど料理に合わせて酒を楽しむ視点が楽しみ方を広げてくれる
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前菜のプレート
ソフトシェルクラブや甘エビを様々なタイ料理の味の組み合わせをまとわせて一皿にしたもの

アラカルトではなくコースだからより分かりやすいと思うが、タイ料理を食べる時に期待する味わいや味の構成要素を分解して、調理法と組み合わせて単体化し、それをコース内へ散りばめるような作り方になっている。

 

タイ料理の経験値があれば、食べながら答え合わせをするような面白さもあるし、何と言ってもあくまでタイ料理として一つ一つがしっかりまとまっているから、シンプルに美味しい。シェフの力量や視点のなせる技だなと思う。

 

2.0のリサーチで、他にも都内、地方で同じカテゴリーに収まるタイレストランで食べてきた。調べればまだまだ全国にありそうで継続して調べてみます。

 

この2.0の流れは1.0と同時にじわじわと進んで行くと思うし、タイ料理の認知を料理界の中でもっと深め、存在感を出していくためには必要不可欠。和食、フレンチ、イタリアンには並ぶジャンルに認知されるようになって欲しいし、2.0の流れが深まれば可能性はあると思う。いい流れが来ていると思うし、引き続き動向を見守りながら応援したい。

 

●ヤムヤムの活動から考えるタイ料理のローカライズ=“新タイ料理”について

 

Yum! Yam! SOUL SOUP KITCHENでは、団体設立の10年前から「47✕77」をテーマに、日本列島47県とタイ王国77県をそれぞれかけ合わせたオリジナルレシピの開発を進めており、産地取材で得た地の食材や生産者の作り手のこだわりや想いをベースに、プロのタイ料理シェフやタイ料理研究家と共に定期的に実施し継続して取り組んできた。

 

現在までに18県、市町村や農業法人などと個別に開催したバージョンも含めると30エリアほどのローカル地域を産地取材し、その土地の旬のローカル食材をつかった新タイ料理レシピを考案し、フードイベントで実際にコース仕立てで食べてもらうことで、土地を知り、関心を抱き、ローカルの情報発信を食べることを通じて関連人口の増加につながればというコンセプトで取り組んでいる。

 

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地域発信も含めた取り組みだからこそ熊本県ver.ではくまモンが熊本県食材のPRで来てくれたり
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徳島県ver.では阿波踊りの学生連が徳島の郷土文化を知ってもらうために参加してくれたりする

 

当時はこのような発想はタイ業界にも全くなく、タイ料理の決められたレシピをそのまま作り、ルールの元に提供するようなスタイルが全てであったと思う。ヤムヤムで新たなコンセプトを掲げて活動スタートした時も、全く何のことかイメージがつかない人たちも多かったのではないかと思う。

タイ料理の新たな可能性を生み出し、食材を作る生産者の情報発信や販売支援になることを意図した活動コンセプトなので、1.0のような決まりを分解して新たに組み立てるる「新タイ料理」の発想で進めている。

 

理解が追いつかないこともあったと思うし、毎回取材などで全貌を説明することが常だった。しかし、いずれ早かれ遅かれ時代はこうなる、タイ料理レストランで普通に旬の食材を使ったフュージョンメニューや日本が誇るローカルの日本酒、ワイン、焼酎、ウイスキー、地ビールがマリアージュされる状況になると思った。

 

このあたりのニュアンスをうまくイベントレポートしていただいているので、参考までに転載しておきます。ブロガーのkyahさん、ありがとう!

Yum! Yam! SOUL SOUP KITCHEN 埼玉県ver. に行ってきた

 

 

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池光エンタープライズの郷さんと坂井さん
長いお付き合いをありがとうございます、タイ盛り上げていきましょう!

 

中にはこれは面白い発想!タイ料理の新たなスタンダードを創る取り組みになると共感して、一緒に動いてくれる仲間も出てきた。

 

たとえば、最初のキックオフイベントから活動協賛企業として今も継続して活動支援して頂いている池光エンタープライズさんや、北千住で27年タイレストランを経営しているチャイヤイの坂本シェフだったり、タイシェフズ協会設立の流れだったり、在京タイ大使館とタイ政府観光庁の正式後援を頂けたのも、両国を食で繋ぐコンセプトや食をテーマにしたローカル産地の活性化、インバウンド&アウトバウンドの観光促進が進む取り組みとなることを少なからず評価していただけたからこそと理解している。

 

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リスペクト!坂本広シェフ
徳島の産地取材や肥薩おれんじ鉄道のタイ料理特別列車、いろんな企画を一緒にやった
今年こそはタイ行きましょう〜

 

ヤムヤムで作って来たタイ料理とローカルの食をつなぐ流れを、応援してくれている食の仲間達でもっと掘り下げて推進して行きたいと思ってます。

 

コロナ禍が変えた食への関わり方が、今後様々な形で顕在化してくるはず。食の新たな市場が生まれる兆しがすでにあり、その流れにヤムヤムで繋がれているノウハウや知見をうまく生かして関わって行ければと。

 

そういうことを考えながら、これから新幹線と飛行機を乗り継いで、産地取材へ行って来ます。続きはまた。

 

★補足★
この記事のメモ書きをしたのが去年の11月。続きを書き足してまとめたので、すでに取材は済んでいます。いろいろと日本国内のタイハーブの最新事情を調べて来たので、追っていくつかに分けて書いてみたいと思います。

 

★2022年アジアのベストレストラン50★
今年は3月29日に授賞式が行われ、タイからは9店舗がランクイン。
29位は寿司屋なので、タイ2.0的には8店舗です。

2位 Sorn
4位 Le Du
7位 Sühring
10位 Nusara
25位 Blue by Alain Ducasse
29位 Sushi Masato
31位 Samrub Samrub Thai
33位 Gaa
46位 Raan Jay Fai

https://www.theworlds50best.com/asia/en/list/1-50