クラビ市内のバスターミナルから約2時間半、トラン市内のバスターミナルへと到着した。トラン市内には2つのバスターミナルがあるのだが、市街地に近い「旧バスターミナル」で降りた。雨季ということもあるのだろうか、ターミナルの周りを見渡してみると、客引きもいなければバイクタクシーやソンテオもいない。ただ年代物のトゥクトゥクが1台停っているだけだ。その年代物のトゥクトゥクの元へ行き、運転手に宿と街の様子を聞いた。安宿が集中している場所は、トラン駅前周辺から時計台へと繋がる通りに点在しているらしい。運転手自慢のダイハツ社製のトゥクトゥク(現地ではフォア・ゴップ(カエルの頭)と呼ばれる)へ乗り込み、まずはトラン駅前へと向かった。
トランの街並みは、漢字の看板や中華風の建物があちこちに点在していて、ずいぶんと中華系の影響を受けている感じがする。近道なのだろうか、「フォア・ゴップ」は大通りを抜けてソイ(小路)へと入って行った。車がすれ違うのも大変なくらいのソイ(小路)を「フォア・ゴップ」が独特の音を響かせながら走っていく。時代を感じさせる木造の家屋や、煤けたセメントだけの質素な建物が建ち並び、軒先では老人が煙草をくぐらせながら物珍しそうにこちらを見ている。まるで一昔前のバンコクの中華街(ヤワラー)のような佇まいだ。駅前に付くと意外と開けていて少々期待外れな感はしたが、旅モードになっている僕は片っ端から安宿をまわっていった。
無事にチェックインを済ませ、ゲストハウスの受付と、隣の建物にあったツアー会社でトラン市内の見所を聞いてみた。「ランド マークは”時計台”で、その近くにナイトマーケットがあるよ。あとはこの近くにモーニング・マーケットもあるかな…。」ん?それだけ?どうやらトラン市内 には”市場”以外は特に何もないらしい。トラン県を訪れるほとんどの観光客はトラン沖に浮かぶ各島々を訪れるという。アンダマン海に面したトラン県は、ン ガイ島(Koh Ngai)、ムック島(Kho Muk)、クラダン島(Kho Kradan)、リボン島(Kho Libong)、スコーン島(Kho Sukon)といった美しい島が数多く存在し、ビーチリゾートとして各国から観光客が訪れる場所である。トラン市内から日帰りツアーなども出ているが、1日では1つの島しか行くことが出来ないし、島に宿泊するにしても日程的に難しい。ツアー会社で相談した結果、ピピ島での島巡りツアーが鮮烈だったこともあって、島巡りの日帰りツアーを申し込んだ。ランチ・保険・シュノーケル・宿までの送迎込で750バーツ(約2250円)、安い!!
スケジュールが決まれば食事だ。教えられたナイトマーケットへ行ってみると、確かに多くの人で賑わっている。が、いかんせん規模が小さく目を引くようなモノも見当たらない。隅からすみまで20分ほどで見終わってしまった…。ただ一つだけ美味しいものに出会う事ができた。普通の「海老と野菜のかき揚げ」だが、空腹の僕には破壊力抜群だった!!
口にした瞬間、海老の香ばしい風味と食感に思わず微笑んでしまった。
人は美味しいものに出会うと微笑んでしまうらしい。急いで10mほど離れた屋台に戻って写真を撮ったほどだ。トラン駅前付近も屋台などで賑わっていたが、ここも驚くような出来事は特になかった。
トランの名物は「飲茶」、「ムーヤーン・トラン」と呼ばれる焼豚、「ゴッピ」と呼ばれる独特ないれ方をする珈琲、そして「カオトム・ブイ」お粥だ。何か特別変わった味がするわけでもなくごく普通の味なのだが、トランと言えばこの四つなのだそうだ。確かに街を歩いていると、焼豚を吊るしている店を多く見かけたし、お粥屋の看板も沢山あった。滞在中、地元民で満席の食堂で何度かチャレンジしてみたが、やっぱり普通の味であった。
他にも、クラダン島(Kho Kradan)、チュアク島(Kho Chuak)、マ島(Kho Ma)などを周り、いくつかのポイントで「ニモ」と一緒に泳ぎながらのシュノーケリングを楽しみ、ランチではシーフード盛り沢山のタイ料理バイキングでお腹を満たした。
ピピ島巡りといい、トラン沖島巡りといい、タイ南部の自然の壮大さに驚かされっぱなしの旅である。